田舎草子

Prose of INAKA

カメラと遠出したはなし

大学4年の冬に初めて自分のカメラを買った。もうすぐ卒業だったこともあり、大学時代最後の思い出をちょっといいカメラで撮っておきたいと思い立ったからだった。
当時のバイト代の大半をつぎ込んで買った、とてもキュートなカメラだ。もちろん買った直後はウキウキで肌身離さず何処へ行くにもお供にしていたが、職についてからはとんと写真を撮ることもなくなってしまった。
そんなカメラを久しぶりにひっぱりだしてすこし遠くへ行ってみよう、とふと思い立った。金はないが時間はある。こんなにもすっきりと晴れた日だ。きっと何かいいものが転がり落ちている。


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自宅から一時間半ほど車を走らせたところにある隣県の道の駅までの旅。約2年ぶりに訪れたのだけれど、季節が違えば見えるものも違っていた。
この道の駅は、施設の脇に広い森林公園や池があるところで、以前訪れた時は池に鴨がたくさん飛来していた。
だが今日は、鴨はおろか野鳥の一羽もおらず、見つけることができたのは池の主とも思えるような巨大な鯉ただ1匹。
そしてあっという間に消えてしまったカナヘビくらいだった。


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正直がっかりしながらも、、二つ目の道の駅へ。ここは一つ目と比べれば規模はかなり小さく、建物もだいぶ古くなっているところだが、前のところにはないものがあった。
それは、ソフトクリーム である。わたしはこういうところに来たら必ずソフトクリームを食べることにしている。道の駅ごとに種類は違うし、ご当地モノがあることも多い。
今日はバニラとチョコレートのミックスだ。今日の気温も相まってべらぼうに美味かった。


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「書を捨てよ、街に出よう。」の言葉を思い出してすこし遠出をしてみたが、街ではなく全くの逆、山の方へ分け入っていく形になってしまった。
それでもよかった。ただ茫漠とした時間を無為に過ごすだけの現状を変えたかっただけ。またいずれ違う季節に違う出会いを果たしてみたい。
惜しむらくは撮った写真を載せようとしたらSDカードをフォーマットしろと言われてしまったことだろうか。